KAISOU BOOKSのために

服従の心理』という本を読んでいる。社会心理学の古典だそうで、
ハンナアレントのいう「悪の凡庸さ」を実験によって赤裸々にした本だ。
自分の現状を打開したいと思って読んでいたわけだが、
読むにつれて、その凡庸さにあきれ果て、胸がつまった。
決然と自らの規範に基づいて、非服従の精神を貫いた二人は、ともに
ナチス占領下のヨーロッパを生きた人だという事実。地獄を経験しないと、
自律的な判断ができないのか。
そして、非服従の姿勢を表明することは、服従姿勢をとることより、
苦痛を強いるらしい。社会秩序を自らが壊したのではないかと
いう後悔が生まれるのだという。



書かれていることが、今の自分の心境に重なってくる。
あまりにも重なりすぎて、拍子抜けするほどだ。
こんなに苦しくて、辛くて、葛藤の多い日々の感情の変化が、
シンプルな段階を踏んでいるだけだというのだ。
内心の疑惑、疑念の外部化、不同意、脅し、非服従
私はいま、不同意のカテゴリーなのか、脅しのカテゴリーなのか。
身を削ることの多いこういう状況、私だけでなく関わる何人かの人も
非常に消耗させる状況を、何が支えているのか。
仕事としての使命?惰性?それともみんな服従してるだけなのかしら。
関わる人を幸福にしない環境ならば、解体してしまえばいいと思うけど、
別の文脈から見れば、それでも存在する意味のあるものなのだろうか。
内実はどうであれ、会社の影響力を内外部に表明するためには、必要とか。



この本を読んで、何をわかったのだろう。現状はこうであると理解したところで、何が変わるのだろう。
当事者でありながら、その前提を否定することを続けるためには、何が必要なのだろう。
そんなこと、する必要もないのかもしれない。それでもしてみたいと思うのはなぜなのかしら。
ヒーローになりたのか。自分を正当化したいのか。周りの人にこういう方法もあるよっていいたいのか。
ただ、新しい世界が怖いからしがみついているのか。



どれもピンとこない。もっとわくわくする何かに出会いたい。失望と付き合い続けるのは、終わりにしたい。



服従の心理 (河出文庫)

服従の心理 (河出文庫)