イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ「ごはんとおかずのルネサンス講習会」


代官山にイル・プルー・シュル・ラ・セーヌというお菓子屋さんがある。オーナーシェフは弓田亨氏。パティシエとして1986年にお店を始め、料理教室を開催し本を出版するようにもなった。そしていま、力を注いでいるのが「ルネサンスごはん」である。弓田氏は著書『失われし食と日本人の尊厳』の中で述べているのだが、日本の食を取り巻く現状は危機的状況にあるという。食物自体の力不足。土が農薬で栄養素を失い、品種改良によって栄養素を軽視した改悪が行われ、ミネラルを十分に含んでいない肥料が与えられることよって、味が薄く匂いも弱い水っぽい野菜が増えたのだという。だから、三大栄養素はもちろんビタミン・ミネラル類を摂取するためには、数多くの種類の食べ物を摂らなければいけないのである。弓田氏からみれば食べ物があふれているのに栄養不足の状態に陥っているのが現代社会であり、自殺の増加やひきこもり、若年性生活習慣病アトピーなどの増加は、大人が「食」をないがしろにしてきた結果なのだそうだ。



では、どんな食事をすればいいのか。その答えとして、2003年に『ごはんとおかずのルネサンス』というレシピ本を出版し、7月にその改訂版が出る。


レシピをみると従来のセオリーを一切無視した調理方法に驚く。たとえば、米はとがない(本には1回だけとぐと書いてあるが、見栄をはったそうだ。本当は0回でいい。)。ヌカにある栄養素を残さず摂取するためだ。基本にホールフードの概念がある。だから、野菜もほとんど皮をむかないし、いりこを多用するのも頭から尾までまるごとつかえるからである。

今日の講習会のメニューは、玄米ごはん、じゃかいもの味噌汁、汗っかきの肉じゃが、そら豆のサラダ、漬物。玄米ごはんといっても玄米100%ではなく、白米玄米タイ米を1:1:1であわせ、いりこ塩昆布刻みアーモンドオリーブオイルをいれる。塩はミネラル分であるため一般的な感覚より多量に使用している。オリーブオイルはヌカを分解させる作用があり、種子油は栄養素が高いため入れるのだという。肉じゃがに入る具も多様である。ごぼう人参玉葱大根蒟蒻豚肉ゴーヤニンニクじゃがいも。9品!だしには、いりこ昆布鰹節干し椎茸切り干し大根刻みアーモンド身欠きニシン。8品!肉じゃがだけで17品も取れることになっている。弓田氏はいまの食品では1日30品では必要な栄養が取れないのではないかと考えていて、ひとつの料理の中にできるだけたくさんの具を入れることを勧めている。

実際のお味はとても美味しいものだった。あく抜きも一切しないのだが、ひとつずつ丁寧に食べると野菜自体の味がしっかりよくわかる。それでいて味付けが濃いわけではないので、結構たくさん食べることができる。砂糖みりんを使わないかわりに様々な食品でだしをとるので、旨みがあり食べやすい。ごはんも噛み応えがあり味がしっかりしている。少量でも満足感のえられるごはんだと思う。

細胞は毎日作り変えられており、半年もすれば全身すべての細胞がうまれかわっているという。細胞を作り出すために必要な栄養素を摂るため日々の食事がある。そう考えると「食」をないがしろにできない。作る側からすれば、親がしてきたとおり、料理書のとおりつくっていれば間違いないと信じて惰性で台所にたっていないかということ自問させられるきっかけとなった。

失われし食と日本人の尊厳 (ごはんとおかずのルネサンスプロジェクト)

失われし食と日本人の尊厳 (ごはんとおかずのルネサンスプロジェクト)

  • 作者: 弓田亨
  • 出版社/メーカー: イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ企画
  • 発売日: 2009/12/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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